『明日への遺言』感想


第十三方面軍司令官兼東海軍管区司令官、岡田資(おかだたすく)中将の軍事裁判を史実に基づいて克明に描いた、小泉堯史監督の作品『明日への遺言』を観ました。小泉監督オールスターズが出演していないこともあってか、故藤田まことさんの名演がことさらに輝いて映ります。

1945年5月14日、名古屋に空襲を仕掛けてきたB-29爆撃機を撃墜し、27名の搭乗員を捕縛した東海軍は、岡田中将の命によって、彼らを全員斬首しました。

戦後、この件で岡田中将(とその部下たち)は国際法違反(捕虜虐待罪)に問われることとなり、軍事裁判に掛けられます。

 

本軍事裁判での争点はふたつ。

第一の争点は、処刑の命令が、私刑や報復の類であったのかどうか?

第二の争点は、適切な処刑だったとして、搭乗員たちの罪状はなんだったのか?

(なお別件で、“斬首”に対する、文化的な捉え方の違いが争点となった“武士道裁判”と呼ばれる裁判も存在します)

岡田中将は一貫して、「“略式手続”によって、無差別爆撃を行なった(=ハーグ条約違反の)“戦争犯罪者”を処刑した」と主張し、米軍関係者だらけの法廷において、全面的に闘う姿勢を終始崩しませんでした。

 

僕は常々、戦中のさまざまな出来事を、戦後の(さらに己のみの)価値観だけで一方的に断じるべきではない、と考えているので、淡々と事実を積み上げて、当時の様子を再現していく本作のスタイルが、とてもシックリと感じられました。

 

岡田中将から託された未来という名の今を、わたしたちは懸命に生きねばなりません。

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です