『我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか』到着


WBPH_01

衝撃のタイトルとパステルカラーの表紙が、混沌とした我々の想いを象徴しているようです。

パスカルが「我々の尊厳のすべては、考えることの中にある」とおっしゃられたように、あらゆることに疑問を持ち、そのことについて考え抜く、というのは、人間を人間たらしめる極めて意義深い行為である、と常々思ってはいるのですが、翻って、模型/プラモについてどこまで考えているか、と問われると、巧く切り返せない自分がいるのも確かです。そんな折、とても素敵な本に出逢えたので、ご紹介します。

さて、本書は群像劇です。

時代と呼ばれたり民意と呼ばれたりする、それ自体は無邪気でイノセントな「我々」と、「我々」の意識を汲み取り、あらゆる平面上の幻を具現化して迫り来る、“ソラリスの海”のような「ホビーメーカー」、そして、「思春期の著者」の3人が、お互いに干渉し合いながら過ごした半世紀の物語です。

 

歴史は、唐突に動き出します。時は、1980年。

バイネームの人形プラモデルとして注目された1/25 ミリタリーフィギュアシリーズ No.5「ドイツ・ロンメル元帥」の野戦コートに施された麗しいパーツ割りが、「機動戦士ガンダム キャラコレ」シリーズの「1/20 No.8 イセリナ・エッシェンバッハ」に多大なる影響を与え、ついに人類は、スカートの中のパンツをプラスチックで錬成するに至ります。

 

その後、「キャラコレ」の系譜から生まれた『うる星やつら』のプラモデル、「ハイスクールラムちゃん」に、彼女のトレードマークであるところの虎縞ビキニではない、まごうかたなきパンツが彫り込まれる、という事件が発生します。憧れのキャラの偶像パンツに直面し、苦慮を強いられた「思春期の著者」は、後年、さまざまな「ホビーメーカー」のキーマンと対談し、人類の罪“パンツ錬成”の本質に触れようとします。

しかし結局、「ホビーメーカー」の思惑は、ソラリスの海と同様に、「思春期の著者」に内在する価値観でとらえることのできない、ある意味、超越した存在のままでした(と、僕は感じました。もしも、対談した中の誰かひとりでも、巨大な十字架を背負い、苦悩と矛盾の中で生きていたならば、「思春期の著者」は救われたのかもしれません)。

 

ひとたびパンドラの箱を開けてしまった「我々」は、その「ハイスクールラムちゃん」以降も、ユイを欲したゲンドウのように、パンツの復活を望み続けました。「ホビーメーカー」はそれに同調して、「思春期の著者」を置いてけぼりにしたまま、汗臭くドロドロした想いを蒸留することなしに、まるごと金型に射出注入して、パンツを創り続けます。平面の海からパンツをすくい取っては、「我々」に提示し続けたのです。

 

最後に「思春期の著者」は、大きな決断をします。

 

しかしながら、それを知る由もない「我々」は、あいも変わらず、偶像のパンツにすがり、偶像のパンツに癒され、偶像のパンツのさらなる未来を熱望するのでしょう。偶像のパンツ自身が「ワタシは海によって創られた、プラスチック製のレプリカでしかない」と悟る、その日まで……。

WBPH_02

ブリスターパックの台紙に書かれた「※ロリコンを採り入れたボディ(前後)」という文字にビックリ! こういう資料も満載です。

タイトルの衝撃を遥かに凌駕する面白さ! この時代を生きてみたかったです(笑)。

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です