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正しく知れば怖くない、「Iris 2」

“人は見た目が9割”なのだそうですが、ソフトウェアも見てくれが大事です。すごそうな見てくれのソフト・シンセは、いかにも良い音がしそうですからね……

「Iris 2」とは

iZotope「Iris 2」は、VSTi/Audio Units/RTAS/AAX互換のソフト・シンセです。画面の1/4を占める“スペクトログラム”のエリアがグラニュラー・シンセっぽい佇まいをしているせいでしょうか、ソフト・シンセのレビュー・サイトでは、“なんだかよくわからないが、雰囲気のある音を出せるシンセ!”とか“画像から音を自由に生み出せるかつてないシンセ!”などといった、空虚な言葉が踊っています。しかし、そういった感想たちは、「Iris 2」の機能を的確に表現しているとは言えません。

「Iris 2」は、同社「RX」の登場以来おなじみとなった“スペクトログラム・エディター”を使ってフィルタリングができるサンプラー、というのが、もっとも正しい定義なのではなかろうか、と思います。

“スペクトログラム・エディター”でのフィルタリング

では、“スペクトログラム・エディター”を使ってフィルタリングができる、とはどういったことなのか、いくつか例をご紹介いたしましょう。

こういう使い方の場合(まったくフィルタリングをしていない状態)、「Iris 2」はホントにただのサンプラーとして機能します。

こちらは中央部分が選択されています(点線で囲まれている)。一見、何事か小難しいことが起きていそうですが、元素材にバンド・パスフィルターをかけているだけです。これくらいのことであれば、普通のサンプラーにも実現可能でしょう。

「Iris 2」が完全に独自のサウンドを生み出せるのは、選択箇所が複数ある、もしくは、不定形になっている、こういった場合です。言い換えるならば、元素材のあらゆる箇所に飛び散っているノイズをピンポイントで削りたい場合や、これまでのフィルターでは実現できないドラスティックな時間変化を描きたい場合に、「Iris 2」を用いる価値がある、ということになります。

ただ、後者の“ドラスティックな時間変化”を聴き取りやすくするには、そもそも全周波数帯に音が詰まっているホワイト・ノイズ系の元素材を選ばねばなりません。それは結局、最終的に出てくる音にある程度の偏りを生じさせることにつながるのですが、こればっかりは、いかんともしがたいところであります。

サンプル・パネルについて

「Iris 2」ならではのフィルタリングについて、その概要を把握できたところで、今度は、サンプラーの心臓部“サンプル・パネル”について観察してまいりましょう。

読み込んだWAVファイルの再生方法は、[Playback]にて、[Forwards](順再生)/[Fwds/Bkwds](順再生から逆再生)/[Backwards](逆再生)/[Bkwds/Fwds](逆再生から順再生)の4種類から選択できます。それぞれについて、ループをしない設定(=ワン・ショット)も可能です。

[Pitch Mode]では、ピッチ・シフトのアルゴリズムを選択できます。音程とともに再生速度も変わる従来的な[Resample]、音程が変わっても再生速度を変えない[Radius RT](非常に高品位ですが同時に鳴らせる音数に制約が生じます。「Iris 2」全体で最大7つのボイスに適用できます)、そもそも音程を変化させない[Fixed]の3種類が用意されています。[Fixed]は、ドラムやパーカッションのループで使うことをメインに想定しているのかもしれませんが、音程感のあまりないキラキラした高音を付加したいときにも使えて、意外と便利です。

17種類のマスター・フィルター

“スペクトログラム・エディター”とは関係なく、信号のマスター段階で一般的なフィルターの役割を担うのが、マスター・フィルターです(つまり、フィルターは2段構えになっています)。

ラダー・フィルターっぽいもの、真空管風のサチュレーションが加わるもの、70年代の東京で作られたフィルターを模したもの(KORG「MS-20」の前期型フィルター!? レゾナンスを8割くらいに設定すると凶悪なピーキーさに圧倒されます)など、合計17種類から選択できます。低域が無駄に膨らまないスッキリした味わいのフィルターたちです。

秀逸なモジュレーション周り

“スペクトログラム・エディター”以外にこれといった独自性のない「Iris 2」ですが、自由度と視認性を両立したモジュレーション周りの操作感は、なかなか秀逸です。

モジュレーション・ソースの矢印アイコン([Four-arrow icon])を任意のパラメータへドラッグ&ドロップすると、そのパラメータがどれくらいの幅で揺らぐのかがツマミの外周上に表示されます(Native Instruments「MASSIVE」の模倣かもしれませんが、とてもわかりやすいGUIだと思います)。また、モジュレーション・ソースのパネルだけを分離し、一覧性を高めることができます。

LFOには、ごく普通のサイン波や矩形波だけでなく、微妙にクセのあるアナログ・テイストな波形やウェーブテーブルをアサインでき、かなり独特な揺れを実現することができます。アルペジエイターは搭載されていませんが、LFOでゲインとカットオフをうまく揺らすと、それっぽいモーショナルな音色を作れます。

身も蓋もない意見でゴメンナサイ

極論、「RX」で加工したWAV素材をお好みのサンプラーに読み込んでやれば、この「Iris 2」と似たような方向性のサウンドを出せちゃうのですが、セールで1,000円くらいになっていることが多々あるので、プリセット用のWAV素材(11GBぶん!)を買うつもりで購入してみるのも面白いと思います!

他のiZotope製品をクロス・グレードで買うための“踏み台”にするのもアリです
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