私、20余年来の生粋のマウス派だったのですが、2020年下期よりトラック・ボーラーに改宗いたしました。諸先輩方、よろしくお願い申しあげます。
「MX ERGO」とは
Logicool「MX ERGO」は、ワイヤレスのトラック・ボールです。角度を調節できるヒンジのおかげで、手のひらの側面(専門的には“月丘”っていうらしいです)をペッタリと机に付けてしまえるため、長時間のパソコン作業が格段に楽になります。
トラック・ボール、はじめました
レコーディング・スタジオのコントロール・ルームで必ず見かけるトラック・ボール。少なくとも20年以上前から業界のデファクト・スタンダードな道具であったそれを、何に抗っていたのか私は見て見ぬ振りをし続け、頑なにマウス派であることを貫いてまいりました。
しかしながら、こうしてテレワークが常態化する中で、友人から勧められたLogicool「M570」を半信半疑で購入。あまりの快適さにコロッとトラック・ボール派へと改宗したうえに、すかさず上位機種であるこの「MX ERGO」を追加購入するに至ったのであります。
自分自身でも驚きの“華麗なる手のひら返し”が発動したわけですが、そもそも、レコーディング・スタジオに設置されているトラック・ボールは、中央に配された大きなボールを人差し指と中指(と場合によっては薬指も)で操作するタイプ(≒Kensington製)が主流で、手首を酷使しがち(手を振るような動きが頻繁に起こる)な設計と、無骨でやや大き過ぎる外観とが、私にとって、導入を躊躇させるのに十分なネガティブ・オーラを放っているように感じられたのです。
その点、Logicool「MX ERGO」は、指以外の関節をほぼ完全に固定でき、しかも、マウスっぽい見た目&大きさで導入時の心理的なハードルも低く抑えられています。トラック・ボールに対する不信感がある人ほど導入したくなる、という感動的なプロダクト・デザインですね。
しっかりボーッとできる
その悪影響ばかりが取り沙汰される昨今ではありますが、ちょっとした調べ物や気分転換には、やっぱり“Webの閲覧”が欠かせません。「MX ERGO」を使えば、Webの閲覧も新次元の快適さになります。
[左ボタン]のさらに左側にある[戻る/進むボタン]は、いちいちマウス・ポインターをブラウザーの[←(戻る)/→(進む)ボタン]まで持っていってクリックせずとも、その場でページを戻ったり進んだりできるボタンです。これと、真ん中の[ホイール]を左右に傾けて(ティルトして)タブを切り替える機能を併用すれば、ボールに触れている親指さえほとんど動かす必要がなくなってしまいます。
しっかりボーッとして、メリハリのある気分転換を心がけたいものです。
音楽制作にもバッチリ
音楽制作に関連するところでは、 プレシジョン・モードという便利機能があります。これは、カーソルの速度と精度を最適化し、精密な操作を行ないやすくする機能で、ボールの近くにある[プレシジョン・モード・ボタン]を押下することで有効となります。
GUIが小さいソフト・シンセのツマミやスライダーを操作する際は、このプレシジョン・モードを有効にするのがオススメです。
ボタンのカスタマイズはもう一歩
ちょっぴり上級者向けの機能ですが、「MX ERGO」は「Logicool Options」を介し、ソフトウェア別にボタン操作をカスタマイズすることができます。例えば、Adobe「Photoshop」をアクティブにしているときにだけ、[ホイール・ティルト]の機能が「ブラシ・サイズの増減」に切り替わる、といった具合です。
とても便利な機能なのですが、(一般的にはマイナーな存在である)DAWに特化した操作が用意されているわけではないため、「Photoshop」と同じくらい超快適! とは言えず、若干の歯がゆさを禁じえません。せめて、ショートカット・キーを割り当てられれば……
ちなみに私は、Steinberg「Cubase」を使う際に、[ホイール・ティルト]にズーム・イン/ズーム・アウトの機能を、[戻るボタン]にアンドゥの機能を持たせております(何故か、リドゥは反応しないのです)。まぁそれなりに役に立つかな、くらいのありがたさです。
全人類の関節を救いたい!
肩~上腕~肘~前腕~手首を脱力したままほぼ固定できるので、10時間程度座りっぱなしの作業が続いても、さほど疲れなくなりました。また、クリック時に指を持ち上げなくてよいため、中指の関節が疲労で反って動かなくなることもなくなりました。
未だにマウスなる旧世代プロダクトが当たり前のような顔をして世に跳梁跋扈し、現代人を苦しめ続けていることに憤りを覚えます…… さぁ、皆さまもトラック・ボーラーへと改宗するのデース!