sound

音楽家のための初代ゲームボーイ(DMG-001)音質比較

“ゲーミング・〇〇”という呼称はともすれば、鮮やかな光を放つものに対する侮蔑的なニオイを感じさせなくもありませんが、私といたしましては、“ゲームを活用した”というダブル・ミーニングを忍ばせつつ、リスペクトを込め胸を張ってそう呼びたい、と思っております。

Let's ゲーミング音楽制作


先日、ピカピカ光る“ゲーミング・パッチ・ケーブル”こと、Producertools.net「PATCHCABLES WITH BUILT IN BI-COLOR LED FOR EURORACK」が届いたのを機に、前々から計画していたゲームと光と音楽の融合、題して“ゲーミング音楽制作”を実践いたしました。
Athena「絵描衛門(デザエモン)」の“ミュージック エディット”画面。半小節ずつ打ち込んでいく、という独特過ぎるスタイルながら、最高にクールなGUIのおかげでさほど苦になりません。

ドラムとベースはファミコンのAthena「絵描衛門(デザエモン)」、メイン・リフはNintendo「初代ゲームボーイ」がそれぞれ担当しています。通奏シーケンス・フレーズとハイハットには、ゲーミング・パッチ・ケーブルをまとったmoog「Mother-32」と「DFAM」を起用。ゲーミング・パッチ・ケーブルは、単に綺麗なだけでなく、ケーブル内を脈動する電圧の昇降が可視化されるため、音作りの面でも果てしなく便利です!

その他の使用機材たちは、以下のとおり。「mGB」、Catskull Electronics「Arduinoboy Pro」、Analogue「Nt mini Noir」、strymon「TIMELINE」、MXR「CSP099 Phase99」、Dr.Scientist「Dusk」、TC ELECTRONIC「Polytune 3」、strymon「Zuma R300」、Old Blood Noise Endeavors「EXPRESSION SLIDER」。

まずは、聴いてみてください

さて、本記事のメイン・ディッシュ、Nintendo「初代ゲームボーイ」の音質比較に話題を移しましょう。私が所持しているいくつかのタイプの「初代ゲームボーイ」の中から、大きな派閥を形成するもっとも特徴的な3タイプを厳選し、「mGB」と「Arduinoboy Pro」を用いてこの曲のメイン・リフを鳴らしました。どのタイプも、まずRupert Neve Designs「5211 2Channel Mic Pre」を通して軽く持ち上げたあと、RME「Fireface UFX II」で録音しています。

◆Ahttps://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/01_ProSound.wav?_=1

◆Bhttps://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/02_RetroSix.wav?_=2

◆Chttps://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/03_NotMod.wav?_=3

お好みのサウンドはありましたか?

いかがでしたでしょうか。思いの外、個性があって驚きますよね。では、順に使用機材を発表してまいりますが、あくまで音楽制作的な観点からの分析である、という前提のもと読み進めていただければ幸いです。

A:Pro Sound

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/01_ProSound.wav?_=4

Aは、よく“Pro Sound”などと呼ばれている改造を施した初代ゲームボーイの音です。純正のライン・アウトを使わず、ボリューム・ポット直後のランドから支流を作って、オーディオ・シグナルをダイレクトに出力させる、かなりメジャーな改造手法です(ほんの少しの劣化をも嫌い、プリ・ポットから出力させる漢らしい改造もあるようです……)。今回はラウドネスを揃えてあるためその効果を実感していただけませんが、かなりの爆音になります。

初っ端から「ピーッ」というノイズが聴こえてきて不安になりますが、演奏がはじまると(ノート・オンを受信すると)この「ピーッ」というノイズは収まりました。他と比べると、粒子感が荒く高音の伸びも控えめで丸っこいサウンドです。

B:RetroSix

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/02_RetroSix.wav?_=5

Bは、RetroSixの「Game Boy Original IPS Screen Kit & Speaker V3」「CleanPower V2」「CleanJuice XL USB C Battery Pack」を実装した、“改造ゲームボーイの正装”とでも呼べそうな初代ゲームボーイの音です。この改造自体は高音質化を標榜しているわけではありませんが、クリーンで安定的/効率的な電圧を供給できるようになる、とのことで、比較対象に加えました。

音のおしりで鳴るボツボツというクリック感と、立ち上がり部分でときどき鳴るパチッというノイズが、とても耳につきますね。前者は隠れている超低音を除去するだけで簡単に改善できますが、後者は総当りの点検と手作業による音声編集が必須でしょう。ラインの音質として判断するならば間違いなく落第ですが、内蔵スピーカーで鳴らした場合、音のキレが良くなったように感じられることもあるので、携帯型ゲーム機ならではのチューニングとして、こうしたアグレッシブな設計がなされているのかもしれません。

C:無改造

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/10/03_NotMod.wav?_=6

Cは、無改造の初代ゲームボーイの音です。

S/N比の悪さこそダントツですが、素直な高音の伸びとクセの無さは随一。さらに、粒子感がきめ細やかに整っている点も見逃せません。ボツボツというクリック感がまったくないわけではありませんが、前述のとおり、ハイ・パス・フィルター1発でサクッと一網打尽にできます。

ということで、初代ゲームボーイを音楽制作に活用する際は、無改造がベスト・チョイスと言えそうです!!

なんてこった……!

……我が家の改造ゲームボーイたちは、素人の私がチョチョイと組み立てたものではなく、ガラクタの山を掻き分けて探し当てたその道のプロから購入した逸品ばかりだったので、この結果には少々ショックを隠し切れないのですが、逆に、任天堂の思慮深さと隙きのなさを痛感した次第でございます。

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