TAK-H.NET

「AFX Station」、芸術性と機能性とが見事に噛み合った感涙のモノ・シンセ

発売日の過酷な争奪戦に負け、完全に諦めていた「AFX Station」ですが、ずっと前からそこにあったかのようにシレッと再販されていたので、シレッと購入したのでした。

「AFX Station」とは

Novation「AFX Station」は、同社の「Bass Station II」を鬼才Aphex Twinの監修で再定義した、リニューアル・プロダクトです。

スペック的には、2基のメイン・オシレーターと、サブ・オシレーターもしくはノイズ・レジェレーターもしくは外部入力(選択式)を搭載した、アナログのモノフォニック・シンセサイザーになります。

見た目がカッコいい!

外装は樹脂製ながらも、細やかなエンボス加工のおかげでマットな質感になっています。指紋が付きにくく、触り心地もサラサラとたいへん素晴らしいです。

また、底面やホイールの側面など、所々に配された差し色のシックな紫が非常に機能していて、全体的に実売価格を大幅に上回る格調の高さを漂わせてくれます(それでいて、重量はめちゃくちゃ軽い! 最高!)。

個人的には、セクション名がドット文字になっているあたりに、ハートを撃ち抜かれました。8bitな音が出るわけではないんですけどね。

モノ・シンセの再発明

「AFX Station」を語るうえで絶対に外せないのが、鍵盤の一つひとつにパラメータのバリエーションを持たせられる機能、その名も“AFXモード”です。

内部的には、1鍵ずつ個別に、元の音色に対してほぼ全パラメータ(アルペジエイター&グローバル設定以外)を上書きできる仕組みとなっており、最大25鍵ぶんの上書きパラメータ群をNovationは「オーバーレイ」と呼んでいます。これは言うまでもなく、1鍵ずつまったく異なる音色にしてしまうこともできる、ブッ飛んだ(それでいて使いドコロ満載な)仕様であります。

いろいろな用途が考えられますが、代表的なものとして、エンベロープやノイズ量をコネコネしてドラム・キットをこしらえたり、3つあるオシレーターの各ピッチをコネコネして(「Cubase」で言うところの)コード・パッドをこしらえたり、その両者を混ぜたり、といったことが可能です。

ドラム・キットを作れる、とはいえ、どこまで行っても最大同時発音数1音のモノフォニックのシンセサイザーであることに変わりはないため、すべての音が後発優先となり、ノート・オンするたびにお尻がパツパツ途切れるのですが、それが逆に、他のシンセサイザーではなかなか生み出せない、味わい深い面白さを醸し出してくれます。さらに、簡易シーケンサー代わりにもなる器用なアルペジエイターを併用すれば、先述した“ドラム+コード”の音色をエレクトロニカ的な楽曲に昇華させることもできてしまいます。ここまで来てしまうともう、アナログ・モノ・シンセである、という大前提すら失念してしまいそうな勢いです。

AFXモード以外の新機能

固定エンベロープとリトリガー・カウント

固定エンベロープを有効化すると、打鍵時間に関わらず常に一定のエンベロープで音色を制御できるようになります(この際、[Decay]が[Sustain duration]となり、[Sustain]で決めた音量を維持する時間を調節する役割を担います)。これは、打楽器風の音色を作ったり演奏したりするのに便利です。

一方、リトリガー・カウントは、一回の打鍵で「タタタッ!」と決められた回数だけ同音連打させられる機能です(同音連打し切る前に鍵盤から指を離すと、その時点で音は止まります)。これを使えば、16分音符のみのアルペジエイターに細かいロールを織り交ぜることが可能になります。

ちなみに、上記2機能はお互いに排他的な仕様になっています。

ポルタメント・タイムの多様化

メイン・オシレーター1と2とで、ポルタメント・タイムに差をつけられる機能です。より正確には、メイン・オシレーター1のポルタメント・タイムに対して、メイン・オシレーター2のポルタメント・タイムをどれだけ遅延させるか、を調整します。

サブ・オシレーターのデチューン

サブ・オシレーターのピッチはこれまで、メイン・オシレーター1のピッチに追従させることしかできませんでした。しかし、独自のデチューンの機能が追加されたことにより、メインの2基のオシレーターと併せ、3和音の音色を作成できるようになりました(何度も言いますが、モノフォニック・シンセサイザーなんですよ!)。

極まる設計の妙

ご紹介してきた“AFXモード”ならびに各種新機能は、基になっている「Bass Station II」でも、ファームウェア・アップデートを行なうだけで実装できてしまいます。つまり、「AFX Station」と「Bass Station II」とは、見た目がちょっと違うだけで中身は完全に同じもの、ということです。

今となっては、続々登場する新製品たちに居場所を追いやられ、“楽器店の窓際族”になりつつあった「Bass Station II」ですが、こんな奇抜なアップデートができるほどに柔軟な設計がなされていたのか! と、とてつもなく驚いております(同様に、しっかりとアップデートをし続けるNovationの姿勢もアッパレです)。

最近のNovation、とても良いです

「AFX Station」の話題から少々離れてしまいますが、最近のNovation、アップデートをし続ける姿勢に限らず、とても良いです。

買ってもらうまでのケアは過剰なクセに、買ってしまうと知らんぷりしちゃう(不動産仲介業者のような)メーカーも少なくない中、Novationは、多数のビデオ・ガイドや充実したFAQ、そして「Components」と呼ばれる製品管理用ソフトウェアなど、あの手この手でユーザーを手厚く導いてくれ、プロダクトを使い倒してもらうんだ! という気迫がそこかしこから伝わってきます(加えて、毎月毎月、1万円ほどの値付けがされている他社プラグインを無料配布してくれたりもします)。

こういうメーカーがもりもり増えてくれると嬉しいですね。

「AFX Station」は公式ストアでのみ再販されています
Exit mobile version