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新たなる、ソフト・シンセの夜明けぜよ! u-he「Repro」

u-he、「良いよ、良いよ」とは聞き及んでいたのですが、Webサイトやブランド・ロゴのデザイン・センスにいまいち共感ができず(生意気言って、ゴメンナサイ)、Native Instruments主催のセールを機に、やっと重い腰を上げて購入を決意した次第であります。

さて、その性能や如何に……

「Repro-1」とは

「Repro-1」は、SEQUENTIAL CIRCUITS「Pro-One」をエミュレーションした、VSTi/Audio Units/AAX互換のソフト・シンセです。エミュレーション系のシンセには、実機にない機能を拡張したものや、ひたすら実機をサンプリングしたものなど、いろいろな種類が存在しますが、この「Repro-1」は、実機の挙動を計算で忠実に再現した、王道のバーチャル・アナログ系シンセサイザーに分類されます。

ソフト・シンセらしからぬ演奏感

ソフト・シンセという文明の利器は、“マスター・キーボードになつかない”とでも表現すればよいでしょうか、往々にして演奏時に何かしらの違和感を覚えるものであります。それは、レイテンシーであったり、過負荷に起因するグリッチ・ノイズであったりなど、さまざまな要素が絡み合っているのでしょうが、仮にそのすべてを完全に回避できたとしても、ハードウェアのように“インターフェイス(入力装置)に吸い付くようなフィールが得られるか”という点では、なかなか怪しいところがあるのではないでしょうか。

しかしながら「Repro-1」は、不思議と、パソコンとマスター・キーボードとが、まるで1台の完結したシンセサイザーであるかのように調和してくれます。入力とサウンドがしっかりリンクしている、と言えば、もう少しオカルト感が薄れるでしょうか。鍵盤から入力できる値はたった127段階しかないわけですが、「そうそう、こういう風にコントロールしたかったんだよね!」という鳴りを見事に返してくれます。

むしろ実機を超えるサウンド

明確に実機よりも高域の解像度が高く、全体的にシルキーな味わいです。低域も伸びがよく、詰まった感じやすっぽ抜けた感じはありません。濃厚なのにのどごしが良い、牧場ミルクで作ったソフトクリーム…… みたいなイメージです(余計にわかりにくい!?)。

「もうちょっとビンテージな味わいをプラスしたい……」という御仁は、高音域が軽く暴れるアナログのプリアンプを通したりすると、グッと来るサウンドになるかと思います。

以下、メインのSYNTHページ以外の解説です。

TWEAKSページ

ただごとではない佇まいのTWEAKS(微調整)ページ。5つのジャンパ・スイッチと5つのモジュールを組み替えることで、マニアックなサウンド調整が可能になっています。部品単位で音色を調整するという点で、ちょうど、Positive Gridの「BIAS AMP 2」や「BIAS Pedal」などとコンセプトが似ていますね。

ただでさえマニアックなTWEAKSページの中にあって、とりわけ興味深いのがフィルターのモジュールでして、u-heが分析用に購入した2台の実機の両方ともがモデル化されており([Crispy]と[Rounded]がそれに当たります)、その大きな“個体差”をリアルに実感できます。

「何をもって実機に似ているとするか?」を考えさせられます……

SEQUENCERページ

SEQUENCERページでは、最大32ステップ✕2のシーケンスを組むことができます。アルペジエイターではないので、分散和音を奏でてくれるわけではなく、一番最後に打鍵した音階を基点にしたシーケンスが走る点に注意。

EFFECTS

パネル下部のEFFECTSには、「JAWS(ウェーブ・シェイパー)」「LYREBIRD(ディレイ/コーラス)」「RESQ(レゾネーター/EQ)」「DRENCH(リバーブ)」「SONIC CONDITIONER(調節器)」という、5つのエフェクターが用意されています。

これら5つのエフェクターは、それぞれのオン/オフと接続順の変更(直列のみ)が可能ですが、グラフィックに変化がない(暗くなったり、入れ替わったりしない)ので、やや不便ではあります。

「Repro-5」とは

「Repro-5」は、「Repro-1」のユーザーたちに懇願されて作ったという、SEQUENTIAL CIRCUITS「Prophet-5」のエミュレーション・シンセサイザーでして、ありがたいことに「Repro-1」のオマケとして同梱されています。

本家の「Pro-One」&「Prophet-5」を、単なるモノフォニック/ポリフォニックの違いである、と捉える向きもありますが、u-heの解釈では、オシレーターとフィルターにちょっとした挙動の違いを見出しているようです(ただまぁ、実際にはこれも、分析に用いた実機の個体差の範疇なのかもしれませんが……)。

感動のポリフォニック

何はさておき、「Repro-1」の高品位なサウンドがポリフォニックで鳴ってくれることに感動を覚えます。また、(プリセットの傾向も大いに影響しているのかもしれませんが)「Repro-1」よりも“新品ピカピカ感”が薄めの印象で、威風堂々とした落ち着きがあります。

以下、メインのSYNTHページ以外の解説です。

TWEAKSページ

「Repro-5」のTWEAKS(微調整)ページでは、10個のジャンパ・スイッチと6つのモジュールを組み替えられます。

さらに上記に加えて、オシレーターごとにパンを振る機能[VOICE PANNING]も隠されています(中央下)。「おっとそれはOberheimのお家芸ではっ!?」と思わなくもないのですが、カッコいいので、ついバンバン使ってしまいます。

EFFECTS

「Repro-1」との相違点は、エフェクターの前段に新設されたポリフォニックの[DISTORTION]と、「JAWS(ウェーブ・シェイパー)」の代わりに仲間入りした「VELVET(テープ・サチュレーター)」です。

「Repro-5」を立ち上げて真っ先に気になったのは、「Repro-1」には無い「サーッ」というノイズでした。最初、SN比が悪いのをシミュレートしているのかな、と思ったのですが、あれこれツマミを回しまくった結果、その原因はエフェクターの「VELVET」にありました。「VELVET」は、同社の単体エフェクター「Satin」を基に開発されたテープ・サチュレーターで、プリセット・ファイル(.h2p)の中身を覗き見るとわかりやすいのですが、見た目以上に高性能です。なお、前述の[DISTORTION]とは違い、「VELVET」はすべて混ざった状態のサウンドに歪みの効果を与えます。

すべてのソフトシンセを凌駕する質感

「Repro-1」「Repro-5」ともに、音の出発点(トランジェント)と音の密度に圧倒的な説得力があり、他のメーカーのエミュレーション系ソフト・シンセたちが、ただ表層をなぞっているだけの紛い物でしかない、と思えてくるほどです(いやまぁ、そもそも紛い物ではあるんですけどね)。

ついでに、サウンドとは直接関係ありませんが、UNDO/REDO機能を備えているのが地味にうれしいところでして、1手だけ戻すことはそうそうないのですが、10手くらいバババッと戻したいときがよくあるので、とても助かります。

ハンス・ジマーをはじめとした多くの音楽家たちが、u-heのプロダクトを大絶賛する理由がよくわかりました。

ソフト・シンセのサウンドが、ひとつ新しいステージに進んだ気がします
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