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ハンス・ジマー先生が愛するピアノ、「Hans Zimmer Piano」

音楽制作者の大半がお世話になるであろう“ピアノ”。音域の広さと音色の美しさで聴く者すべてを魅了する反面、扱いの難しさも一級品で、経験を重ねるにつれ、ビシッと決まりがちなお気に入り音色を“置きにいく”ことが増えてしまいました。反省、反省…… で、反省しつつ散財するわけです。本当に反省しているのか!

「Hans Zimmer Piano」とは

Spitfire Audio「Hans Zimmer Piano」は、代表作を挙げればキリがない泣く子も黙る映画音楽家、ハンス・ジマー先生が制作指揮をなさったピアノ音源です。収録されている個体は、アヴィ・ロード・スタジオと並び称されるロンドンの名門、AIRスタジオに設置されているグランド・ピアノ“スタインウェイD型”。先生が愛してやまないそのピアノのすべてが、88,352ファイル/452.7GBもの非圧縮WAVで、1滴たりとも零さぬようパッケージングされています。

Spitfire Audioはこれまでに、344人が奏でる壮大なストリングス・サウンドを収録した「Hans Zimmer Strings」や、氏が生み出しハリウッドのみならず劇伴すべての超定番となった“ズンドコ・ドラム”を思う存分楽しめる「Hans Zimmer Percussion」など、ハンス・ジマー先生の名を冠したプロダクトをいくつかリリースしていますが、それらと比べても「Hans Zimmer Piano」の容量は圧倒的。いやがうえにも期待は高まります!

勝利の方程式をあえて崩す

(良し悪しではなく好みの問題なので、勝手なことを言わせていただきますが)私にとって、ピンとくるアコースティック系のピアノ音色は少なく、ふた昔前には「GigaPiano」、最近では、Synthogy「Ivory II American Concert D」ばかりを使っておりました。

ただ一方で、“勝ちパターン”に安住するのを嫌う生来の天の邪鬼な精神が、傍らで常に「オマエ、この曲もそれを使うのか!? ピアノの音色、いっつもそれだな!」と辛辣な言葉を投げかけてくることもまた、ずっと心に引っかかっていたのです。

そこで、“新年度”をキッカケ&言い訳に、軽い腰をスッと上げて、ピアノ音源を追加することにしました。さっそく、現行のピアノ音源を片っ端から視聴しまして、Vienna Symphonic Library「Bosendorfer Imperial」と本製品とが最終選考に残ったのですが、天井高のある広いホール(AIRスタジオのLyndhurst Hall)での残響音を収録している、という点が決め手となって、「Hans Zimmer Piano」の方を選択しました。

正しい使い方!?

ハンス・ジマー先生のご芳名が看板に掲げられていることからも、「これが俺の音だ、文句あっか!」的な作りになっているだろうことは容易に想像できますが、実際、ユーザーが介入を許されているパラメータはかなり少なめです。しかも、[Stereo Width]やフィルター類([Boom][Crack])は、ちょっとでも動かすと盛大に位相が狂うため(ステレオ環境で試した場合。イマーシブ環境だと印象が変わるかもしれません)、実質的に、4ポジションのミックス・バランスを調整する[MIC MIX]のみが、“≒音色の可変域”と考えてよいと思います。

……なんて書くと、とてつもなく融通が利かないダメ音源に感じられるかもしれませんが、マイクの設定/設置した場所/狙った質感などで細分化された大量の個別パッチが用意されているので、それらを「KONTAKT」内で好きなようにレイヤリングして音色を組み立てる、というのが、ディベロッパー側が想定している“正しい使い方”のようです。

食い合わせの良い、明るめ音色

音色の方向性は総じて明るめかつ繊細で、誰が聴いても、どんな楽器と混ぜても「うん、イイね!」と感じる優等生的なサウンドに仕上がっていると思います。しかしながら逆に、偏執狂の如く“クセ”が排除されている印象もあり、ノイズやワイルドさを是とする音楽家の方々には少々物足りなさを感じさせるかもしれません。まぁこの辺は、カメラのレンズにおける“ボケ味と解像力”の関係性と同じで、あちらを立てればこちらが立たずですから、万人が満点をつけるピアノ音源が現れることはないのでしょう。

さて最後に、試聴ファイルを数点用意いたしましたので、ぜひ聴き比べをお楽しみください。

◆Arturia「Piano V2」

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/04/Piano-V2.wav?_=1

全体的にモヤッとした音像なのが気になります。サンプリング系ではなくモデリング系ですので、今後の発展に期待しましょう。

◆Native Instruments「Noire」

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/04/Noire.wav?_=2

派手さは薄いものの、まとまりがあって良い印象。ペダルから足を離すときの“切れ際”がちゃんと再現されています。

◆Native Instruments「Alicia's Keys」

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/04/Alicia.wav?_=3

低域が左側でブモワッ! としていて「混ぜにくそうだなぁ」なんてことを真っ先に思い浮かべちゃうのですが、音自体は好みです。

◆Spitfire Audio「Hans Zimmer Piano」

https://tak-h.net/wp-content/uploads/2021/04/HZP.wav?_=4

いくつかのパッチをレイヤリングして、自分好みのサウンドを作ってみました。音の素性の良さは言わずもがな、ベロシティと音のマッチングが驚異的に完璧で“値が目に浮かぶ”ほどです。それに加えて、リバーブでもないIRでもない本物の残響。いやぁ、最高です! もちろん、レイヤーするパッチ次第で、もっと艶のある音色/低域にガッツのある音色も作成可能ですぞ!

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