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音色を増やして、社会貢献しよう

あまりのプリセット数の多さに、“一生かかっても使い切れないシンセサイザー”と讃えられるSpectrasonics「Omnisphere」ですが、その音色数をさらに爆増させる追加音色集「Bob Moog Tribute Library」がこの度アップデートされたので、さっそく試してみました!

「Bob Moog Tribute Library 2」とは

Spectrasonics「Bob Moog Tribute Library 2」は、我が“心の神”であらせられるエリック・パーシングさんがプロデュースなされた、同社のソフト・シンセ「Omnisphere」用の追加音色集です。世界中の著名ミュージシャンによってこの製品のためだけに完全新規で録り下ろされた407種類(2.4GB)もの音素材をふんだんに使った、珠玉の1,343音色が「Omnisphere」に追加されます。

サウンドの傾向は、「Atmosphere」や「Omnisphere」の個性とも言えるシネマティックで壮大な音色群と比べ、むき出しのシンセ感がかなり強め。しかも、EDM系のスコーン! と突き抜けた明るい方向ではなく、インダストリアル的でダークな方向に寄せられており、サラッと一聴しただけで「おおっ、大きくベクトルを変えてきたなぁ!」という印象を受けるほどです。さらに、複雑なパッチングで錬成されたのであろう効果音系の音素材も多数収録されており、単純な追加音色数以上に「Omnisphere」の可能性の幅をググッと拡げてくれそうな予感がします。

波形レベルで美しい

昨今、音の出はじめに「パチッ!」というノイズを付加し、それを“トランジェント”と呼んで愛でる風潮が高まっておりますが、私にはどうしても“ゼロ・クロスしていないところでリージョンをぶった斬ってしまった事故音”にしか聴こえないので、正直、苦手だったりします。

「Bob Moog Tribute Library 2」はというと、ネイキッドでド直球の電子音を主テーマとしつつも、トランジェントに頼らない丁寧な立ち上がりの処理が全音色に徹底されていて、とても美しい仕上がりになっています(決して、立ち上がりが遅い、というわけではございません)。さすが、エリック・パーシング神によるお仕事。「D-50」からブレていません、感動いたしました。

そういえば、本製品の紹介文でよく目にする、“ハンス・ジマー先生の「Moog Modular」からサンプリングした、オーバー1,000サンプルのドラム・サウンド”は、「Hans Zimmer Moog Drums」「Modular Drumming in Six」「Delidding Procession Perc」などの音色で使用されていますぞ。

必見のフレーバー・テキスト

「Bob Moog Tribute Library 2」に限ったことではなく「Omnisphere」全般の機能なのですが、[MAIN]パネルの[NOTES]部分に、音色に関するフレーバー・テキストが書き込まれているのをご存知でしょうか。サウンド・デザイナーが何から着想を得てその音色を作ったかが語られていたり、「モジュレーション・ホイールを使うと、ディストーションが深くなるよ」といった具体的なTipsが書かれていたりする、地味ながら面白いコーナーです。

「Bob Moog Tribute Library 2」で必見なのは、フランスが誇るシンセサイザーの貴公子ことJean-Michel Jarreさんのフレーバー・テキストたち。氏のシンセサイザー愛が爆発し過ぎていて、何行にもわたる長文で音色の(というより、元ネタのシンセサイザーについての)解説をしてくださっております。誰しもがそうだと思うのですが、“好きなことを語るときに早口になっちゃう現象”を想像してしまって、微笑ましく感じました、ウフフ。

音色購入でできる社会貢献

ということで、「Bob Moog Tribute Library 2」のご紹介でございました。

……最後に大切なことをつけくわえておきます。本プロダクトは、収益の100%すべて(!)が、“Bob Moog財団”に寄付され、「Dr. Bob's SoundSchool」や「Moogseum」を中心に、音楽/歴史/科学の発展に役立てられるそうです。音色を購入するだけで、社会貢献ができちゃう、ということですね。

私自身、普段からできるだけ寄付をするように心がけているのですが、欧米の方々の“寄付文化”“ボランティア文化”への驚異的なコダワリには、いつも本当に感服させられます。こういった活動がどんどん実を結んで、なるべく多くの人が幸せを感じられる、優しい世界になってほしいものです。

私の99ドルも、きっと素敵なことに使われるのだろうな、などと考えると、手持ちの音色数が増えたこと以上にワクワクしてしまうのでした!

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