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SONY「XRJ-55A90J」を音楽制作PCのディスプレイにしてみた

音を作るクリエイターが、今なぜディスプレイにこだわらなければならないのか!? 今回は、そういったお話をツラツラとしてまいります。

時代とともに変わる音楽制作環境

本サイトをHTTPS化する以前の2017年4月27日、「これからの音楽制作パソコンに求められる要素」と題した記事の中で私は、“これからの音楽制作パソコンは、メモリ偏重主義を脱し、グラフィック・ボードの性能にも気を配るべきだ”と結論付けました(この頃はまだ、音楽制作パソコンならばオンボード・グラフィックで問題ない、という意見が大勢を占めていたのです)。

これは、映像やプログラムと離れたところ(下流工程)で“当てずっぽうな素材を量産する工業ロボット”に成り下がることなく、コンテンツが産み落とされるまさに源泉(上流工程)に深く関与できる存在であってほしい、という音楽家の方々へ向けた(勝手な)願望から発展した予測だったのですが、こうして数年経って周りを見渡すと、我ながらそれなりに的確な提言だったなぁ、と感じます(コロナ禍でその動きに拍車がかかった感さえありますね)。

では翻って、さらに先の未来はどうなるのか? そう考えたときに私は、4K/120p対応のディスプレイを導入する必要性を強く感じ、押っ取り刀でSONY「XRJ-55A90J」を購入いたしました。本記事では、私の思考の道筋を辿り返しながら、なぜ「XRJ-55A90J」を購入するに至ったのか、について解説していきたいと思います。

「PlayStation 5」が牽引する未来

今後数年、リッチなゲーム体験ないし映像体験は「PlayStation 5」が牽引するでしょう。ですので必然的に、その「PlayStation 5」が想定している映像スペック、つまり“4K/120p”に対応したディスプレイが必須になるはずです。

そこで、既発の製品を片っ端からチェックしていったわけですが、4K(3,840×2,160ピクセル)に対応したディスプレイは数あれど、120p(120fps)にも、となると選択肢は驚くほど絞られます。加えて、「VRR(Variable Refresh Rate)」「ALLM(Auto Low Latency Mode)」「HDR(High Dynamic Range)」「WCG(Wide Color Gamut)」といったゲーミング的な性能と、「自然な発色」「豊かな階調表現」「高コントラスト」といったクリエイティブな性能の両輪を突き詰めていくと、ほぼ、最新の「BRAVIA XR」シリーズ一択になってしまいました(2021年5月現在)!

選択の余地がないというのは困った事態でありますが、奇しくも(……というにはあまりに出来過ぎで、こうした思考の導線までをも含めた総合的な販売戦略なのでしょうけど)、「BRAVIA XR」は「PlayStation 5」と同じSONYの製品ですから、“メーカーが考える最高のクオリティ”を享受できる、と思えば、4K/120p対応のディスプレイとして「BRAVIA XR」シリーズの製品をチョイスすることは、むしろ願ったり叶ったりなのかもしれません。

ゲーム以外でも基準となりつつある4K/120p

SONYのサイトを巡回しながら3機種ほどに狙いを定めていく中で、面白いことに気が付きます。ゲームに限らず、「α1」「α7S III」「EOS R5」を筆頭とするプロシューマー向けデジタル・カメラの動画機能も“4K/120p”に集中しはじめているのです。もちろんスペック上の数字など、ユーザーからの支持を得られなければ何の意味も持ちませんが、ヨドバシカメラの“レンズ交換式デジタル・カメラ売れ筋ベスト10”(2021年4月下期)において、1位(「EOS R5」)/5位(「α7S III」)/10位(「α1」)をそれぞれが獲得しており、あながち根拠のない数字遊びとも言い切れない状況になっています。

これまでのデジタル・カメラの製品ライフ・サイクルから逆算すると、向こう6年以内に、“4K/120p”というスペックが、ゲーム・クリエイター/ゲーマー/映像クリエイターのみならず、大多数の人々にとって非常に重要な試金石になっていくであろう、と私は確信しました。

未体験のデスク環境が実現!

▲Adobe「Lightroom」でRAW現像している様子。Fキーを押下して全画面表示に切り替えると、驚異的な写真体験ができます。ちなみに、奥のサブ・ディスプレイは27インチです。

そんなこんなの思考をアレコレ巡らせ、最終的に購入を決断したのが、「BRAVIA XR」シリーズのフラグシップ・モデルにあたる「XRJ-55A90J」です。


「XRJ-55A90J」を選択した理由は、制作者の意図をロスレスで伝えんがため、1台1台ひときわ入念なファクトリー・キャリブレーションを施しているという、クリエイター・ファーストな開発コンセプトに惹かれたため。音楽制作で言い換えるならば、高品位なモニター・スピーカー/モニター・ヘッドフォンのような存在を目指した、ということになりましょう。たしかに、モニター・スピーカー同様、映像作品を吸収する際の知覚的な解像度が数段上がり、考え抜かれた色合いの妙や細かい演出に気付かされることが増え、より深く感動できるようになりました。

「XRJ-55A90J」はパソコンのディスプレイとしても一級品で、「Cubase」では、60トラック以上をいっぺんに表示して楽曲構造の視認性を高められますし、「Lightroom」では、さも眼前にその光景が広がっているかのような没入感に浸りながらRAW現像を行なうことができます。120pの恩恵を受けるのはもう少し先になりそうですが、現時点で十分にお釣りが来るくらいの満足感を得られています!

この記事が、皆さまの音楽制作環境の未来を考えるキッカケになれば幸いでございます。

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