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向こう10年使えるメロトロン、「SampleTron 2」

私、「Mellotron」が大好きです。したがって、『Strawberry Fields Forever』も、『2000 Light Years From Home』も、『In The Court Of The Crimson King』も、『SAKURAドロップス』も、全部大好きなのです!

「SampleTron 2」とは

IK Multimedia「SampleTron 2」は、400種類以上のさまざまな「Mellotron」系サウンドが収録されている、VST/Audio Units/AAX互換のソフト・シンセです。

ちなみに、「Mellotron」とは、鍵盤の一つひとつに組み込まれた磁気テープを打鍵時に再生することによって音を鳴らす、1960年代生まれの鍵盤楽器。もともとは伴奏用に作られたリズム・ボックス的な存在でしたが、偶然にも“実在する楽器の音をメディアに録音して、いつでも何度でも鳴らせるようにする”という考え方が、後年に登場するサンプラーそのものだったため、“サンプラーの始祖”などと呼ばれることもあります。

旧「SampleTron」との違い

旧(初代)「SampleTron」との違いは、収録されているサンプルとGUI以外で大きく4点あります。レイヤー機能と、エディット機能と、テープ・モデリングを備えたオリジナル・サンプル・ロード機能、そして、ビンテージ系ラック・エフェクターを意識したエフェクト機能です。

レイヤー機能

最大3つの音色をレイヤー/キー・スプリットできる機能です。実機の仕様を再現しているのですが、最近のソフト・シンセは重ねたいだけ立ち上げるのが当たり前になっているので、この機能ならではの、例えば“重ねると音量が落ちて独特の飽和感が出る”みたいな付加価値があればイイのになぁ、と思いました。

エディット機能

3レイヤーそれぞれの音量/チューニング/キー・レンジ、6種類のフィルター、アンプ・エンベロープを調整できる機能です。「Mellotron」に対してフィルターってのは、ちょっと似合わないんじゃないか!? と思わなくもありません。

オリジナル・サンプル・ロード機能

ユーザーが用意したWAV/AIFFファイル(ビット・レート:16/24bit、サンプリング・レート:22,050/24,000/32,000/44,100/48,000/88,200/96,000Hz)をインポートし、オリジナルの音色を作成できる機能です(長くなるので割愛しますが、ファイル・ネームを参照した一括インポートができたり、ベロシティ・レイヤーを組めたり、ラウンド・ロビンに対応していたり、と地味に高性能です)。ここで設定できるテープ・モデリングが実に優秀で、単にテープっぽいノイズをミックスするだけでなく、ピッチをごく自然にヨレさせる、周期的にグニャグニャさせる、ところどころに引っかかりのような癖をつける、といった“っぽい”効果を手軽に得ることができます。

見た目が鍵盤なので、ついついクロマチックな楽器をインポートしたくなりますが、Hip Hopなドラム・ループをインポートしてテープ風に汚す、という使い方も乙だと思います。

エフェクト機能

エフェクトは、「Channel Strip」「Tape Echo」「Multimod」「Vintage Plate」の4種類。どれも質感高く、単体で使いたいくらいの出来栄えなのですが…… 皮肉なもので、このエフェクトたちのせいで“いわゆるメロトロン感”が薄まって聴こえてしまうんですよねぇ。剥き出しの汚いアノ音が欲しい方は、容赦なくオフってしまってください。

……なんとなく伝わりましたでしょうか? つまり、オリジナル・サンプル・ロード機能以外の追加機能は、総じて蛇足です(ゴメンナサイ)!

ややドッシリし過ぎなサウンド

音の傾向は、IK Multimediaらしい、中低域に芯のあるドッシリしたサウンドです。比較のため、GForce「M-Tron」(懐かしい!)や、The BeatlesのCDなどを聴いてみましたが、どれも「SampleTron 2」ほどドッシリしていませんでした。

もちろん、原音を下手にいじり倒しているわけではなく、現代的な味付け(もしくは社風)の範疇なのですが、ちょっとだけ低域を削ったほうが、CDやレコードで聴ける“いわゆるメロトロン”なサウンドにより近づけられそうです。

「Mellotron」系音源の決定版

終始いろいろとケチをつけてしまいましたが、他を寄せつけない圧倒的物量を誇る本プロダクトは、今後10年以上“「Mellotron」系音源の決定版”候補の筆頭に挙げられ続けることでしょう(本家も頑張れ……)!

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