sound

3つの音源が織りなす「Pigments 2.0」のカラフル・サウンド!

まんまとBlack Fridayを堪能しております。メール・ボックスにセール情報が飛び込んでくるやいなや、脱兎の如く買い漁りに行っているのですが、実態のないソフトウェアというものを実態のないまま購入して喜べるようになったのは、そこに“学び”を発見できたから、なのかもしれません。

気がつけば今年もあともう少しですが、大いに学び続けようと思います。

「Pigments 2.0」とは

「Pigments 2.0」は、バーチャル・アナログ/ウェーブテーブル/サンプル・プレイバックの3つのエンジンを搭載した、ハイブリッド系のVSTi/Audio Units/AAX互換ソフト・シンセです。

音の方向性は、やや硬めで行儀良く澄み切っており、Xfer Records「SERUM」やReveal Sound「Spire」などを彷彿とさせる、まさに“流行ど真ん中”な風情を漂わせております。

まずは、シンセサイザーの心臓部とも言えるオシレーター周りから観察してまいりましょう。

バーチャル・アナログ・エンジン

さて、開発元のArturiaといえば、「Modular V」「ARP2600 V」「Prophet V」など、すでに伝説となっている数々のエミュレーション系ソフト・シンセを開発してきた、フランスの電子楽器メーカーです。

「Pigments 2.0」に搭載されているバーチャル・アナログ・エンジンにおいても、歴代のソフト・シンセ開発で磨き上げられた“True Analog Emulation”と呼ばれる回路エミュレーション技術が惜しみなく投入されているため、何の加工も施していないプリミティブな波形でさえ、驚くほどの説得力に満ちたサウンドを響かせてくれます。

ウェーブテーブル・エンジン

ウェーブテーブルとは、サンプラーのポン出しのように波形全体を最初から最後まで鳴らし切るのではなく、ひと続きの波形の中の一定の範囲だけをループして鳴らす方式の音源です。発音を持続したままループ範囲をスライドさせられるのが大きな特徴で、倍音の構成が時間軸とともに大胆に推移していく摩訶不思議なサウンドを作り出せます(逆に、ループ箇所をまったく移動させなければ、アナログ・シンセと似たようなサウンドが得られます。

「Pigments 2.0」では、119種類ものプリセット波形に加えて、任意のユーザー波形をインポートすることも可能です。波形のインポートは、エクスプローラーで.wavを指定するだけ、というお手軽さで(内部では、ウェーブテーブルのお作法に則って2,048サンプル単位で区切っているようです)、いくつか存在するインポート可能なウェーブテーブル音源のソフト・シンセの中で、もっともストレスがない操作法を採っているのではなかろうか、と思います(ちなみに、インポートした.wavは、<C:\ProgramData\Arturia\Samples\Pigments\User\Imported>にシレッとコピーされます)。

単なる懐古的なウェーブテーブル音源の再現にとどまらず、ONにするとループ範囲のスライドで生じる波形のズレが緩和されツルッとした音の変化が可能になる[Moroh]ボタンや、最大8音をデチューンして左右に広げられるユニゾン・モードなど、現代的なサウンドを作るためのアグレッシブな仕様が数多く盛り込まれている点にも注目です。

サンプル・プレイバック・エンジン

上記2音源だけでもかなり強力なのですが、バージョン2.0になって、グラニュラー・シンセシス対応のサンプル・プレイバック音源が追加されました(プリセット波形は259個。任意のユーザー波形をインポート可能で.wavは<C:\ProgramData\Arturia\Samples\Pigments\User\Classic Samples\Imported>にシレッとコピーされます)。

一般的にグラニュラー・シンセシスといえば、波形をスライムのようにコネコネしてヌメーッとしたテクスチャー・サウンドを錬成するのが得意ですから、UI的にも、操作法的にも、そういった部分をこれ見よがしに前面へ押し出してくるものですが、「Pigments 2.0」のグラニュラー・シンセシスは、一定の範囲をマシンガンのように連続再生するだけの、とってもプレーンな状態からスタートさせてくれます(グラニュラー・シンセシスらしく言い換えるならば、グレインを一定のテンポで同方向にのみ走らせる設定、という感じでしょうか)。無論、ここから深くエディットしていけば、良い塩梅にヌメーッと粘り気を帯びてくるのですが、むしろ私には、そのデフォルト状態のマシンガン・サウンドが非常に非常に新鮮に感じられ、大いにクリエイティビティを刺激されたのでした!

「Pigments 2.0」では、これら3つの音源を好きな組み合わせで2つまでレイヤーして鳴らすことができます。

実は、圧倒的物量を誇るフィルター

シンセサイザーにおける“サウンド加工の花形”といえば、今も昔もやっぱりフィルターでしょう。「Pigments 2.0」には、全部で9タイプ(MultiMode/SEM/Comb/LowPass Gate/Matrix 12/Phaser/Surgeon/Mini/Formant)のフィルターが搭載されており、最大2つのフィルターを同時に使用(シリーズ接続/パラレル接続/シリーズとパラレルのミックス)することができます。

ここでもArturia独自の回路エミュレーション技術“True Analog Emulation”が積極的に活用されており、Mini/SEM/Matrix 12といった、シンセ好きならば誰しもがグッと来る歴史的銘フィルターたちのサウンドを自分の音色に取り入れられるようになっています。

ところで、フィルターのタイプは確かに9つなのですが、実際には、MultiModeタイプ内だけでも、LP6/HP6/LP12/HP12/BP12/Notch12/LP24/HP24/BP24/Notch24/LP36/HP36/BP36/Notch36の計14モードを有しており、並のソフト・シンセでは到底比較にならないほどの圧倒的な物量を誇っています。表面的な数字で誤魔化そうとしない、Arturiaの誠実な姿勢が垣間見えますね。

独立プリセットを持つ、本格仕様のエフェクト

最後にもうひとつご紹介したいのが、エフェクトです。単体販売できるクオリティのプラグイン・エフェクト(Rev PLATE-140/Rev INTENSITY/Rev SPRING-636/Delay TAPE-201/Delay MEMORY-BRIGADE/Delay ETERNITYなど)も手掛けているArturiaならではの、本格的な超高品位エフェクトが目白押しです。

▲「Pigments 2.0」のユーザーズ・マニュアルより引用。[BUS A][BUS B]を直列([BUS B]→[BUS A]も可能) 、[SEND BUS]を並列に配置して最終段でミックスするパターン(上段)と、すべてのバスを並列に配置して最終段でミックスするパターン(下段)を選べます。

全部で14種類あるエフェクト(Multi Filter/Param Eq/Compressor/Distortion/Overdrive/Wavefolder/BitCrusher/Chorus/Flanger/Phaser/Stereo Pan/Delay/Tape Echo/Reverb)は、3系統の内部バスにそれぞれ3つずつ、合計9つ使用することができます。しかも、内部バスのルーティングまで調整できちゃうという、至れり尽くせりな仕様です。

また、他のソフト・シンセであまり見かけない機能として、音色のプリセットとは独立した、エフェクトのためだけのプリセットが用意されています。地味ではありますが、誰もが必ずしもありとあらゆるエフェクトに精通しているわけではありませんから、とても親切で素晴らしい設計だなぁ、と感じました(エフェクト・プリセットの数が全体的に少なめなのは、ぜひ改善していただきたい!)。

20年の蓄積は伊達じゃない!

ここまで膨大に、そして柔軟に、かつ無駄のない実戦的なパラメータ群ばかりを取り揃えたソフト・シンセは、グルッと見渡しても、Spectrasonics「Omnisphere」とUVI「Falcon 2」くらいしか思い当たりません。さすがArturia、20年の蓄積は伊達じゃない!

ただ、「SERUM」のUIを意識し過ぎたせいで、よっぽど高いはずの自由度やポテンシャルを適切にプロモーションできていないような気がする、なんて思っちゃうのは余計なお世話でしょうか……

もっと早く買っておけばよかった!
関連記事はこちら