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「NTS-2」、オシロスコープがこんなにも愛おしいとはっ!

Eurorack(ユーロラック)をはじめてからというもの、オシロスコープの必要性を改めて痛感いたしまして、虎視眈々とこの製品のリリースを待っておりました……

「NTS-2」とは

「NTS-2」は、組み立て式の多機能オシロスコープです。最大4つの波形を同時に表示できるオシロスコープ・モード、2系統のオーディオ信号/CVを出力できるファンクション・ジェネレーター・モード、入力信号の周波数特性を観察できるスペクトラム・アナライザー・モード、入力信号の音程を計測するチューナー・モードを備えています。


組み立て式、ということで、「ハンダ付けをするのかな?」とか「部品を壊しちゃったらどうしよう……」などなど、不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。しかし、ご安心ください! ユーザーがやるべきことは、“パネルをパキッと割る”“部品を差し込む”“ネジを締める”の3種類だけ。昨今のプラモデルよりよっぽど簡単だったので、「もう少し骨があっても良かったのになぁ!」と感じたほどでした。

4つのモードの詳細

オシロスコープ・モード(SCOPE)

本体上部の[INPUT1][INPUT2]端子から入力した信号の波形を表示するモードです。注意したいのは、この2つの端子がTRSである点。つまり、ステレオに対応した端子なので、Y分岐ケーブルを使い、1端子につき2系統のモノラル信号を入力することも可能です。ただ、端子同士が非常に接近しているため、4系統の入力をフルで使いたい場合は、いったん延長ケーブルをかませるなど、ちょっとした工夫が必要かもしれません。

仕事柄、人並み以上に波形を見続けており、今さらそんなものを眺めても何の感動もなかろう、とたかをくくっていた私ですが、流している音楽の波形を表示させた「NTS-2」の小窓をボーッと見つめていると、まったく飽きないし、とっても癒しになるんですよね。これは本当に嬉しい誤算でした。


また、[DISPLAY]を[XY]に設定すると2次元的な表示(リサジュー図形)になり、“音を使ったひと筆書き(Oscilloscope Drawing)”という古き良き遊びを楽しめます。取り急ぎKORGのロゴを描いた音を作ってみたのですが、この音に至るまでに、OがQに見えたり字幅が揃わなかったりで、密かに3回ほど失敗しております……

ファンクション・ジェネレーター・モード(WAVE)

任意のオーディオ信号、または、任意のCVを出力できるモードです。オーディオ信号では“音程”を、CVでは“BPM”を指定できる点が、実に楽器メーカーらしい特徴ですね。出力を担当する[OUTPUT1][OUTPUT2]端子は、ともにTS(モノラル)となっております。

オーディオ信号/CVを出力するには、本体右下の[START/STOP]ボタンを押下します。その際、ボタン押下で再生/停止を切り替える[Cont.](いわゆるラッチ/トグル)、ボタン押下中だけ再生する[Push](いわゆるアン・ラッチ/モメンタリー)、そして、ボタン押下時に1周期だけ再生する[1-Shot]の3つから鳴らし方を選択できます。

スペクトラム・アナライザー・モード(FFT)

本体上部の[INPUT1][INPUT2]端子から入力した信号の周波数特性を表示するモードです。フィルターの特性を視覚的に確認したり、周波数の分布を読み取ったりするのに便利です。

画面のリフレッシュ・レートは約50Hzとのことで、ごく一般的なパソコン(30fps)で表示するプラグインのスペクトラム・アナライザーよりも、時間軸では高精度です。

チューナー・モード(TUNER)

本体上部の[INPUT1][INPUT2]端子から入力した信号の音程を計測するモードです。A=440Hzだけでなく、410~480Hzの範囲で1Hz刻みの調整ができます。

近年は、多様性の観点から、平均律に対してアンチテーゼを唱える楽器や演奏家を数多く見かけるようになりました。その波は“平均律の権化”たるデジタル・シンセサイザーにも押し寄せており、ドレミを鳴らすことにこだわらない、音程感の希薄なプロダクトが激増しています。そういった製品たちを西洋音楽的な響きの中に採り入れる際に、このチューナー・モードは、たいへんありがたい存在となることでしょう。

図鑑のような豪華本をバンドル

「NTS-2」には、その商品名「NTS-2 oscilloscope kit + PATCH & TWEAK with KORG」のとおり、KORGシンセサイザーの歴史/音色づくりのノウハウ/アーティスト・インタビューが満載の書籍、Bjooks『PATCH & TWEAK with KORG』が同梱されています。

こちらの書籍、“英語オンリー”ということで気後れしてしまいそうなのですが、ふんだんに用いられた美しい写真と、そこらじゅうに並んでいる見知った用語のおかげで、読解難易度はさほど高くなく、シンセ愛好家ならば絶対に楽しめる内容になっています。ちなみに私、同社の『INSPIRE THE MUSIC - 50 YEARS OF ROLAND HISTORY』と『PATCH & TWEAK with Moog』も所有しておりまして、そちらも超絶オススメでございますぞ!

KORGらしさ全開のプロダクト

2010年にリリースされた「monotron」以降のKORGは、大艦巨砲主義的ワークステーション系シンセと並行して、玩具と楽器との絶妙な境界線上を漂う“カッコ可愛いプロダクト”を多数開発し、世の中に大きなインパクトを与えまくってきました。

この「NTS-2」もその流れを汲む意欲的な製品で、“現KORGの強みを最大限に活かした、十徳ナイフ的な最強ガジェット”と言えそうです!

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