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“懐かしさ”が溢れ出す「Generation Loss mkII」

Generation Lossを使う私はロスト・ジェネレーション。失われてはおりますが、今日もなんとか元気にやっております! すべてに、ありがとう!

「Generation Loss mkII」とは

私の祖父は、近所の電気屋さんにうまく言いくるめられて不必要な電気製品を買いまくる癖があり、祖母や母からよく注意されていました。しかしながら、そのおかげで私は、当時の最新鋭ワープロや超小型計算機に触れる機会を与えてもらえ(祖父から「オモチャじゃないんだぞ!」と怒られつつも)、今から思えば、現在の生き方の根幹を形成することとなる、貴重で素敵な時間を過ごせたように思います。

基本的には何の脈絡もなく買われてきた電気製品たちでしたが、祖父がひときわ熱心に蒐集し、私も強烈な影響を受けたのが、Sonyの“ハンディカム”(民生用カムコーダ)でした。祖父の家に遊びに行くたび、湯呑がひとりでに動き出すストップモーション・アニメーションのマネごとや、人が消えたり現れたりする特撮モドキなど、しょ~もない映像作品をたくさん作ったものです。

そんな80~90年代の空気を、精密な研究と分析に基づいて再現してくれるストンプ・ボックスが、Chase Bliss「Generation Loss mkII」です。「Generation Loss mkII」は、“VHS Duplicator(複製機)”と名付けられたエフェクトで、長い間使われていなかったビデオ・カセット・レコーダー(家庭用ビデオ・カセット・レコーダーの第1号機、日本ビクター「HR-3300」か!?)だったり、コンパクト・カセットMTRの代名詞TASCAM「Portastudio」シリーズだったり、8mmビデオ・カメラの内蔵マイクだったり、Dictaphoneのボイス・レコーダーだったり、玩具だったり、WALKMAN(初代の「TPS-L2」か!?)だったり、オープン・リール・デッキ(AKAI「GX-635D」か!?)だったりのサウンドを忠実にエミュレートしてくれると同時に、“ワウ”“フラッター”“飽和感”“ノイズ”といった要素を個別に調整でき、徹底的に自分好みのLo-Fiサウンドをクリエイトすることができます。

機能の詳細

表に出ていてすぐに変更できるパラメータは、[WOW][VOLUME][MODEL][FLUTTER][SATURATE][FAILURE][AUX][DRY][NOISE]の9種類。

[WOW]は、周期の長い回転ムラから生じる、ランダムなピッチ変化の深さを決めます。[VOLUME]は、Wet信号の音量を決めます(Dry信号の音量は、後述の[DRY]で決めます)。[MODEL]では、12種類のEQプロファイルからお好みのモデルを選択します。このツマミは少々シビアな調節が必要で、値にすると、0~14がEQプロファイルを使用しない、15~23が[CPR-3300 Gen 1]モデル、24~32が[CPR-3300 Gen 2]モデル、33~42が[CPR-3300 Gen 3]モデル、43~52が[Portamax-RT]モデル、53~61が[Portamax-HT]モデル、62~71が[CAM-8]モデル、72~81が[DICTATRON-EX]モデル、82~90が[DICTATRON-IN]モデル、91~100が[FISHY 60]モデル、101~110が[MS-WALKER]モデル、111~126が[AMU-2]モデル、127が[M-PEX]モデル、となっています。

[FLUTTER]は、周期の短い回転ムラから生じる、ランダムなピッチ&音量変化の深さを決めます。[SATURATE]は、俗に“テープ・コンプ”などと呼ばれる独特の飽和感を調整します。選択している[MODEL]によって効果が変わります。[FAILURE]は、テープ・メディアらしい不完全性を表現するための要素である、接触不良([DROPS])/テープ詰まり([SNAGS])/異物混入によるヨレ([CRINKLES AND POPS])の強さを調節します。

[AUX]では、左側のフット・スイッチで操作するエフェクトを選択します。停止時のピッチ下降を再現する[STOP]、[MODEL]で選択したEQプロファイルをバイパスする[FILTER]、一瞬で[FAILURE]のパラメータを最大値にできる[FAIL]の3種類から選べます。[DRY]では、Dry信号の音量を[NONE](0%)/[SMALL]/[UNITY](50%)の3種類から選べます。[NOISE]では、ヒス・ノイズ/ハム・ノイズ/メカ・ノイズの音量を[NONE][MILD][HEAVY]の3種類から選べます。

Chase Blissの醍醐味、dipスイッチ

Chase Blissの製品といえば、dipスイッチの存在を忘れるわけにはいきません! dipスイッチとは、ツマミやトグルだけでは調整しきれない細かすぎる設定を“ONかOFFか”または“AかBか”で決め込んでいく操作子でして、一般的には、基板の裏など目立たない場所に隠してあるものなのですが(「設計時の思想から大きく逸脱して欲しくない……」という開発者の切なる想いもあるのでしょう)、Chase Blissは、あえてアクセスしやすい背面に配す独特な筐体デザインを貫くことで、確固たる地位を築き上げたのです。

そんなdipスイッチのおかげで、ストンプ・ボックス型ながら、“[FAILURE]の値を大きくしてヨレヨレな感じを出したいけど、音が途切れてしまう[DROPS]の効果だけは取り除く”という注文の多い御仁のニーズにもしっかり応えていただけます(具体的には、[DROP BYPASS]のdipスイッチを[ON]にします)。また、本機には、すでにディスコンとなっている旧型「Generation Loss」のすべての機能が、[Classic mode]と銘打って内包されており、それを呼び出す役目もdipスイッチが担っています。

歓喜のステレオ対応

私、Chase Blissのプロダクトを、その素晴らしさに気づきながらも、今まで少し避けておりました。なぜなら、「CXM 1978」を除き、モノラル・イン/モノラル・アウトの製品しかなかったから。ギターだけでなくシンセサイザーやDAWのアウトプットの装飾にもストンプ・ボックスを活用したい私にとって、モノラル・イン/モノラル・アウトという仕様はとても不便なのであります……

しかし、この「Generation Loss mkII」は、モノラル・イン/モノラル・アウトだけでなく、ステレオ・イン/ステレオ・アウト、そして、モノラル・イン/ステレオ・アウト、さらには、左右で独立した[Failure]効果が適用される[SPREAD]にも対応しています。もう、DAWを2回しする必要も、同じ製品を2つ買う必要もありません! 歓喜!

秋冬シーズンにピッタリです


さて、最後になりましたが、秋の訪れをレトロなサウンドで紡いだ1曲をお送りいたします。こちらは、DAWで作った楽曲のマスター段に「Generation Loss mkII」を挿してミックス・ダウンしたものになります。「(Lo-Fi系エフェクトではあれど)ストンプ・ボックスをマスター段に挿せる時代が来たか!」と、とてもうれしい気持ちになりました!

ちなみに映像は、祖父のハンディカムを借りて遊ぶ小学生時代の私をイメージして制作。変な話ですが、“肝心なものがちゃんと撮れていない感じ”が出るように、それでいて、あざとくなり過ぎないように腐心いたしました。楽しんでいただければ幸いでございます!

この調子で、「MOOD」のステレオ化もお願いできないでしょうか……
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