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ハイブリッド機材の完成形、「Analog Rytm MKII」

電子楽器のリニューアルというのは、今後もプロダクトのサポートが継続され、ユーザーの裾野がさらに広がることを意味するわけでありますが、どうしても後発の方が良く見えてしまって、“めでたくもあり、めでたくもなし”な感情になってしまいますなぁ……

ということで今回は、つい先日、新色のリリースが発表されたばかりの「Analog Rytm MKII」を取り上げます!

現世代最強スペックのドラム・マシン!

Elektron「Analog Rytm MKII」は、最大同時発音数8音のドラム・マシンです。マーケティング的に“アナログとデジタルのハイブリッド”という表現がよく使われているので、Roland「TR-909」やIK Multimedia「UNO Drum」のような、“皮モノはアナログだけど、金モノはデジタル”な建付けの(悪く言えば、よくあるタイプの)ドラム・マシンなんだろうな、と思ってしまうところですが、そう考えるのは早計というものでございます。

音色の作り方次第では、なんと12音色すべてをオシレーターからアウトプットまで“純粋なアナログ”に設定することができる、正真正銘、筋金入りのアナログ・ドラム・マシンでもあるのです!

……ただ、そういった硬派でマニアックなスペックを有してはいるものの、その特徴以上に、アナログとデジタルが渾然一体となった“ならではの音色、ならではのグルーヴ”こそが、「Analog Rytm MKII」の最大の魅力なのではなかろうか、と私は考えているので、本記事では、アナログ部分だけでなくデジタル部分も分け隔てなく観察していくことにいたしましょう。

28種類の「MACHINE」で音色を作り込む

「Analog Rytm MKII」では、本体左側のパッドに各々1音色ずつ、合計12音色をアサインして「キット」を構築します。それぞれの音色は、「MACHINE」と呼ばれる“音源とパラメータのセット”を呼び出して作り込みます。

どの「MACHINE」を選ぶかによって、出せる音のキャラクターの幅はある程度絞られますが、バス・ドラム用に6種類(「BD HARD」「BD CLASSIC」「BD FM」「BD PLASTIC」「BD SILKY」「BD SHARP」)、スネア用に4種類(「SD HARD」「SD CLASSIC」「SD FM」「SD NATURAL」)、リム・ショット用に2種類(「RS HARD」「RS CLASSIC」)、ハンド・クラップ用に1種類(「CP CLASSIC」)、タム用に2種類(「BT CLASSIC」「XT CLASSIC」)、ハイハット用に5種類(「HH BASIC」「CH CLASSIC」「CH METALLIC」「OH CLASSIC」「OH METALLIC」)、シンバル用に3種類(「CY CLASSIC」「CY METALLIC」「CY RIDE」)、カウベル用に2種類(「CB CLASSIC」「CB METALLIC」)、その他パーカッション用に3種類(「NOISE GEN」「IMPULSE」「DUAL VCO」)、合計28種類もの「MACHINE」が取り揃えられているため、アナログ・ドラム・マシンにありがちな「結局、みんな同じ音になっちゃう!」とか「定番のセッティング以外の音色が使えなさ過ぎる!」系のストレスは皆無です。

「Analog Rytm MKII」の音作りの幅の広さについての説明は、Webを探してもあまり見つからないので、どうしても世間的に“やたら高価なドラム・マシン”という印象だけがついて回っているように感じられますが、いやいや、中途半端なドラム・マシンを複数台買うよりも、よっぽど納得度の高い選択になり得るのでは、と思います。

「MACHINE」は、ハイブリッド構成

前述した「MACHINE」は、基本、アナログ音源(「PERCUSSION SOUND GENERATOR」)とデジタル音源(「SAMPLE PLAYBACK ENGINE」≒サンプリング&インポート可能なサンプラー)がバディを組んでいて、そのお互いをミックスして鳴らしたり、どちらか片方だけを鳴らしたりして使用します(Elektronの仕様では、最大同時発音数は8音ということになっていますが、国内メーカー的なカウント方法を採るならば、最大同時発音数は16音ということになりますね)。

この設計が絶妙に便利で、ドラム・マシン然とした無機質な音色に生楽器のテイストを薄く足す、という使い方もできますし、サンプリングした909のスネア音色に対してアナログ音源で芯を補強する、という使い方もできます。アナログ音源とデジタル音源がバディを組んでいる「MACHINE」だからこそ、アナログ同士/デジタル同士のレイヤーではなかなかうまくいかない微調整が、可逆的にツルッと実現できてしまうわけです!

また、オシレータの後段にあるアナログの「OVERDRIVE」回路が良い仕事をしてくれているのでしょうか、不思議なことにほとんど無調整でも、アナ/デジ両者の音源の質感が自然にマッチするうえ、しっかりと「Analog Rytm MKII」の個性を持った出音になってくれます。もしDAWでのミックスに難儀しているならば、お手持ちの機材に「Analog Rytm MKII」を追加してみることが、ブレイクスルーの呼び水になるかもしれませんよ。

シーケンサーの再発見、パラメータ・ロック

「MACHINE」で作り込んだ魅力的な音色を演奏するための「シーケンサー」にも、アナログの良さを引き出すデジタルならではの工夫がたくさん盛り込まれています。

その中で、もっとも強力&有名な機能が「パラメータ・ロック」です。身も蓋もないことを言ってしまえば、DAWによくある「オートメーション」と同義で、録音中のツマミの位置を記録して再生時に再現したり(LIVE RECORDINGモード)、16個の各ステップにおけるパラメータを数値入力して再生時に反映させたり(GRID RECORDINGモード)する機能なのですが、「MACHINE」と「シーケンサー」と「ツマミ」がひとつの機材の中で直結しているためか、内部パラメータが128段階ではないためか、音色の変化具合に“人が通った温もり”みたいなものを感じられるのです。

こういった独特な現象は、表現に気をつけねばオカルトっぽい胡散臭さを漂わせてしまいますが、それと同時に、音楽制作のモチベーションを大きく左右する一要素であることも、実体験として多くの音楽家に認知されているところでありましょう。

ちなみに、「パラメータ・ロック」は、「MACHINE」のデジタル音源にロードするサンプルの変更さえも記録することができますから、ドラム・マシンを超越したサンプラー・ワークステーションとしての活躍も期待できます。

……と書いたところで、まだ本格的な同期演奏用の機材を集められなかった大学生の頃に、サンプラー・ワークステーションのBOSS「SP-505」を駆使し(DAWで作った楽曲を小節単位で切り刻み、“フレーズ・サンプル”としてインポート、「SP-505」内のシーケンサーで順番に並べ直し、クリックを左ch、オケを右chに振ってそれぞれをモノラルでアウトプットしていました)、バンドのライブに活用していたことを想い出しました。生ドラムの演奏にブレイク・ビーツをかぶせたり、特定のフィル・インに手弾き不可能な高速シーケンス・フレーズを混ぜたりなど、オーディエンスがちょっとビックリしているのを体感するのが嬉しかった記憶があります。

新色がカッコ良過ぎてちょっと悔しい

2001年にリリースされた銘器「Machinedrum」が放つ、ちょっとダークでグルーミーな“Elektronの音色”が大好きだった私は、この「Analog Rytm MKII」と出逢った初日、あまりの喜びに、プリセットのリズム・パターンを聴きながら入眠しました。それくらい、優しくて頼りがいがあって美しいプロダクトです。

精悍な顔つきの新色バージョンも近々リリースされますので、気になった方は、ぜひチェックしてみてください!

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