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IRは可能性の塊なのであーる

インパルス・レスポンス(以下、IR)を使ったエフェクターといえば、誰しもが真っ先にコンボリューション・リバーブを思い浮かべることかと思います。無論、私もその一員で、出始めの頃は、世界各国の著名ホールで収録された反響IRを血眼になって収集したり、自身で山奥の反響IRを収録しに出かけたりなどしていました。

そんなある日のこと、個人でIRを提供しているとあるサイトにて“デジタル・リバーブのIR”を見つけ、「……あ、そうか!」とハッとしたのを今でも鮮明に覚えています。

リバーブだけじゃないIR

さっそくですが、IRの原理などについては下記記事の“「PROFILER」とは”の項にてクドクドと書き連ねておりますので、ご参考になさっていただければ幸いです。

UVIがサンプリングに執着する理由を考えてみた先日、UVI「Vintage Vault」を購入しました。世間では、「モデリング全盛時代に、UVIはいまだにサンプリングをやって...

お忙しい方のために、重要な点のみをかいつまむとこんな感じ。

「音響機器A」のインプットにインパルスを入力して、同じく「音響機器A」のアウトプットから出てくる音をサンプリングすれば、「音響機器A」を通すことによって生じる“周波数特性の変化”や“音量の変化”を“時間軸に沿って”抽出した「音響機器AのIR」が得られます。

この「音響機器AのIR」をギターの音に対して適用(畳み込み演算)すれば、“「音響機器A」を通して弾いたギターの音”を再現することができます。

要は、IRで再現できるのはリバーブだけじゃないですよ、ということでございまして、せっかくなのでデモンストレーションがてら、手元の機材をいくつかIR化してみました。

まずは、Rupert Neve Designs「5211 2Channel Mic Pre」です(セッティングは、[GAIN]ツマミ:36、[HPF]ボタン:OFF、[SILK]ボタン:ON、[TEXTURE]ツマミ:全開)。

伝説の正統後継者「5211 2Channel Mic Pre」作った人の顔が見えるプロダクトというのは、やはりグッと来ますね。それが伝説の機材の末裔ならば、なおさらです。今回はそういうお話!...

コチラのIR(.wavファイル)をダウンロードしていただき、一般的なIRリバーブ系プラグインに読み込ませて何かしらの音を入力すると、上記セッティングの「5211 2Channel Mic Pre」を通して得られる効果を再現できます(ステレオ・トラックへインサートした際にステレオ感が狭まる場合は、スプリット・モノ/デュアル・モノで試してみてください)。

◆無加工の音(Raw)

◆「5211」実機を通した音

◆「5211」のIRを適用した音

さすがに口が裂けても「完全再現できてる!」とは言い難いですが、高域の密度が充実し天井が高くなったように感じるSILK独特のニュアンスは継承できていると思います。

お次は、プラグインを試してみましょう。Arturia「Pre 1973」です(セッティングは、[0.36kHz]:+12.0dB)。より変わったことがわかりやすいよう、ブーミーな質感を狙いました。

◆無加工の音(Raw)

◆「Pre 1973」実機を通した音

◆「Pre 1973」のIRを適用した音

おや! 結構、区別がつきませんね。実機の方が低域の押し出しが幾分マイルドかも!? そうでもないかも!? と、違いは感じられどもそれをうまく説明できないくらい肉薄しています。

最後に、IK Multimedia「T-RackS EQ 73」です(セッティングは、[3.2kHz]:+9.0dB)。

◆無加工の音(Raw)

◆「T-RackS EQ 73」実機を通した音

◆「T-RackS EQ 73」のIRを適用した音

ブーストした3.2kHz付近の変化だけでなく、低域が整頓されて腰高になる感じまで含めて、ほぼ完全再現と言ってしまって差し支えないレベルです!

IRの得手不得手

まさに“夢が広がりんぐ”なIRなのですが、ここで一旦、その特徴を整理し、現実を直視しておきましょう。

IRの特徴

  1. 静的な(線形の)エフェクトはかなり精確に再現できる:(ガッツリ歪ませないタイプの)アンプ系/EQ系/リバーブ系/ディレイ系/(エンベロープで変化しないタイプの)フィルター系は得意
  2. 静的なエフェクトならば、直列につないだ複数のエフェクトの再現もできる
  3. 動的な(非線形の)エフェクトはうまく再現できない:スナップ・ショット的に挙動を固定できないダイナミクス系/歪み系/ピッチ・シフター系や、変調の周期が毎サンプル、リセットされることになるモジュレーション系は苦手
  4. パラメータ変更が柔軟でない:「もう少しハイを上げたい!」と思ったら、実機のハイを少し上げてIRを再収録する必要がある≒実機再現にこだわり出すと無数のIRが必要になる

……急になんだか“夢がしぼみんぐ”になっちゃったかもしませんが、考え方を変えて、“俺流最強セッティングのお手軽ほぼ再現機能”としてIRを活用する、というのはいかがでしょうか。例えば、「キックのサウンドは、『PRE-73 MKIII』を通したあと、虎の子の『550』で軽く100Hzをブーストするのが俺流最強セッティング!」だったとしても、ライブやちょっとしたスケッチの度に、扱いに気を遣うアウトボードやストンプ・ボックスたちを引っ張り出してくるのはとても億劫です。その一方で、音楽家たるもの、お気に入りの機材の音を思う存分に浴びて気分をぶちアゲたいのは当たり前。そういった際に、エフェクターのセッティングをあらかじめIR化しておけば、IRローダーをひとつ用意するだけで、いつでもどこでも俺流最強セッティングをお手軽にほぼ再現することができるようになります。ちょうど、ドラえもんのひみつ道具である「とりよせバッグ」の如く、自宅のエフェクターたちを出先や机上に呼び寄せて使える、というわけです!

救世主、現ーる

さて、肝心のIRローダーなのですが、プラグイン以外でそれなりの精度が担保されている製品は、ラック・タイプかフロア・タイプがほとんど。可搬性を重視すると、「ユーザーIRを読み込ませることはできません!」とか「ユーザーIRは、2,048サンプル(とても短い)まで!」といった厳しい制限がついて回り、“手のひらサイズ”&“任意のIRを本体内に大量に保存できる”&“半秒くらいのIRを読み込める”&“高品質”といった勝手な欲求をすべて満たしてくれるわがままプロダクトはこれまで存在しませんでした。

そんなギンヌンガガプのような真空地帯に突如姿を現したのが、BOSS「IR-200」です。「IR-200」は、同社が“次世代ペダル”と銘打ち売り出している200シリーズ筐体のストンプ・ボックス型アンプ・シミュレーター兼キャビネット・シミュレーターなのですが…… キャビネット・シミュレーターで採用されているIRローダー機能がとても優秀で、先述のあらゆるスペックを網羅する素敵仕様となっています。具体的には、32bit浮動小数点/96kHz/500msのユーザーIR(.wavファイル)を、ステレオで64個、モノラルで128個保存可能。これならば、長尺のホール反響などは無理だとしても、たいていの静的なエフェクターをIR化してまとめる&持ち運ぶことができるハズです。

また、クオリティ的にはオマケ程度なのかもしれませんが、メインのアンプ・シミュレーター/キャビネット・シミュレーターの機能とは独立して柔軟にルーティングできる単体EQと単体リバーブを備えているので、現場ではじめて気づいた“どうしても回っちゃう低音”をピンポイントで切ったり、空間に合わせて響きの最終調整を行なったりなど、とっさの応急処置にも対応できそう。こういったきめ細やかな配慮に、開発者さんの愛を感じずにはいられませんね! 愛あーるってなモンです。

買うのであーる

ということで、その可能性を探るべく、近々「IR-200」を購入しようと思ってはいるものの、500シリーズ筐体でインプットとIRローダーを4系統ずつ装備した「IR-200」の上位機種があったらなぁ…… なんてことをつい妄想してしまう私なのでありました。

もしも「GP-20」の後継だからってことで「GP-200」などと名付けられていたら、絶対に見逃していただろうと思います。ネーミング、大事
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