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マシン・ライブに挑戦しようぜ!

“六十の手習い”という素敵な言葉がありますけれども、いくつになっても新しい物事に、素直な関心を抱ける人間でありたい、と強く思っております!

マシン・ライブとは

今、世界的ブームを巻き起こしている新しいスタイルの電子楽器の楽しみ方――“マシン・ライブ”

細かい流派はあるのかもしれませんが、一般的に、パソコンを使わずに電子音楽を奏でるパフォーマンスの全般(いわゆる“DAWless”)、というユルいくくりで捉えられることが多いようです。そのパフォーマンスの内容も、カッチリと打ち込まれた楽曲の上でスパイス的に音の変化を加えるパターンから、完全インプロヴァイズで音を紡ぎ出すパターンまで、まさに千差万別。多くの音楽家を惹きつけて止まないマシン・ライブの魅力は、こうしたシーンの寛容なあり方にも支えられている、と言えそうです。

マシン・ライブは、ルーパーを使った即興演奏である“ライブ・ルーピング”の文化と共有する面が多々あり、両者のハイブリッド的なパフォーマンスもよく見かけます。

思い思いの楽しみ方で

さて、“何でもアリ”なマシン・ライブではありますが、もっともメジャーなのは、音の出る小さな電子楽器(Elektronの製品群、RolandのAIRAブランド、そしてKORG「volca」シリーズが鉄板)と、ストンプ・ボックスなどのエフェクターを数台ずつ組み合わせるスタイルでしょう。このスタイルでは、軸となる電子楽器にあらかじめ打ち込んでおいた音の欠片たちを代わる代わる鳴らしたり、エフェクト操作で緩急をつけたりしながら、リアルタイムに楽曲を展開させていきます。

これだけでも無限に時間が溶けていくほどクリエイティブで楽しいレクリエーションなのですが、さらに、楽曲の展開と並行してパッド型のコントローラーでドラムを演奏する、だとか、ゲームボーイなどの非電子楽器を組み合わせる、だとか、たった1台の電子楽器で手品のようにさまざまな音を繰り出す、といった風に、思い思いの個性的なスタイルを自由に突き詰めていけるところが、最高に面白いポイントだと思います。

マシン・ライブの司令塔、「KeyStep Pro Black Edition」近年のハードウェア熱の高まりを受けて開発された製品群がこなれはじめ、機が熟した感があるので、鍵盤付きハードウェア・シーケンサーの雄、「K...

これが私のマシン・ライブ

そんなこんなで、私のマシン・ライブ・パフォーマンスがコチラでございます。

機材の詳細

今回メインには、Roland「D2」というちょっと古めの製品を据えました(余談ですが、ハイフンのないRoland製品って珍しいですね!)。「D2」は、奇抜な外見&突飛な操作法とは裏腹に、8パートものシンセサイザー/シーケンサーを搭載していて(“8人編成のバンド”が中に入っているイメージです)単体でかなり融通が利くうえに、そのシーケンサーの出力先を[内蔵シンセ][MIDI OUT][両方]の3つからパートごとに選択できる、という驚異的な拡張性の高さをも持ち合わせています。パフォーマンスでは、曲全体のシーケンスだけでなく、ドラムとリード以外の音色も担当してもらいました。

ドラムを担当したのは、IK Multimedia「UNO Drum」。コンビニのお弁当より小さいくらいの、可愛いアナログ&デジタル・ドラム・マシンです。シーケンサーを内蔵しており、パターンを打ち込んでの同期演奏も可能でしたが、「D2」の機能を活かしたかったので、同期させず、純粋な外部音源として使用しました。

「UNO Drum」は、スネア以外も一級品でした発表時から、やたらとスネアの音色に注目が集まっていた、IK Multimedia「UNO Drum」をようやっと購入しました。同社の「U...

ウェーブテーブル・シンセのSONICWARE「LIVEN BASS&BEATS」は、リード担当です(本来は、マシン・ライブに特化した高機能なプロダクトなのですが、こちらも純粋な外部音源として使用しております)。ウェーブテーブル・シンセと言えば、次々と表情を変えていくモーフィング・サウンドこそが真骨頂ではありますが、プリミティブな波形のウェーブテーブルを鳴らせばバーチャル・アナログ・シンセとして扱えるのでは! と思いまして、Plugmon「Analog Anthem」のウェーブテーブルを換装してみました。

8bitサウンドの魂を解き放つ「LIVEN 8bit warps」「ELZ_1」を開発したSONICWAREから、ついに「LIVEN 8bit warps」がリリースされました! 2020年1月2...

Dr.Scientist「Dusk」は、ストンプ・ボックス・サイズのアナログ・フィルターです。「LIVEN BASS&BEATS」からの出力をフィルタリングする役目を担ってもらいました。カットオフやレゾナンスのツマミを回せば、アナログ・シンセやバーチャル・アナログ・シンセでお馴染みの「シュワァアーン」という“あの”サウンドを得られます。ただ、ツマミ同士の間隔が狭く細やかな操作をしづらい印象でしたので、エクスプレッション・ペダル入力にold blood noise endeavors「EXPRESSION SLIDER」を接続し、スライダーの上げ下げでカットオフを操作できるようにしてあります。

BOSS「TE-2 Tera Echo」は、ディレイともリバーブともつかない摩訶不思議な空間系エフェクトです。シンセ・リードの音色によく合うのでトッピングしてみました。「LIVEN BASS&BEATS」の音は、「Dusk」でフィルタリングされたあと、この「TE-2 Tera Echo」を経由して、ミキサー(TASCAM「Model 12」)へと流れていきます。

飛び散るパーティクルとたゆたうドローン、「TE-2 Tera Echo」近頃のストンプ・ボックス・タイプのエフェクターの進化には目を見張るものがあります。Hologram Electronics「Microc...

「Dusk」と「TE-2 Tera Echo」は、strymon「Zuma R300」から電源供給を受けています。近頃は、シンセ系のミュージシャンにも愛好家が急増しているストンプ・ボックス系のエフェクターですが、構造上どうしてもノイズの影響を受けやすいので、電池または信頼できるパワー・サプライを使ってあげるのがベターだと思います。

「D2」は先述のとおり、“シーケンサーの出力先を[内蔵シンセ][MIDI OUT][両方]の3つからパートごとに選択できる”のですが、肝心のMIDI OUTが1系統しか装備されていません。今回はどうしても、ドラムとリードの2パートを別々の機材へ割り振りたかったので、sigboost「midiglue」に、MIDIスルー・ボックス的な役割(1系統のMIDI入力を複数系統のMIDI出力へ分配する)を担ってもらいました。

「D2」「UNO Drum」「LIVEN BASS&BEATS」の各サウンドは最終的に、TASCAM「Model 12」でまとめ、そのまま直接録音しました。「Model 12」は、ミキサー機能/MTR機能/オーディオ・インターフェイス機能/DAWコントローラー機能などを備える、新世代スペックの小型ミキサーです。小~中規模のホーム・スタジオであれば、よくあるルーティングの悩みの大半をコレ1台で解決できるのでは、と思えるくらい超優秀なプロダクトでございます!

操作の詳細

まだまだマシン・ライブ初心者の私ですので、機材のトラブルよりも、自分の脳みそがとっ散らかって“何をしているかわからなくなる”ことの方がよっぽど危険です。そこで、本体でのほとんどの操作をMIDIメッセージとしてMIDI OUTから送信できる「D2」の卓越した機能を活かし(どんだけ優秀やねん!)、「UNO Drum」と「LIVEN BASS&BEATS」の操作も「D2」から行なえるように構成しました。

「D2」を使うからには、中央に鎮座するオレンジ色のタッチ・パッド“D-FIELDコントローラー”を無視するわけにはいきません。序盤は、[RPS(リアルタイム・フレーズ・シーケンス)]を用い、サンプラーのポン出し感覚でエレピのフレーズを呼び出しています。次に出てくるのは、準備段階から「絶対にやろう!」と決めていた[SD ROLL(スネア・ドラム・ロール)]。描く円の大きさと動きの速さに連動してスネア・ロールのテンションが高まっていくのがお分かりいただけるかと思います。見た目も微笑ましい、素敵な機能ですよね! 中盤で用いたADLIB(アドリブ)は、横方向の移動で音程が変化するタイプの単音演奏機能です。鍵盤然としたインターフェイスで音を出すよりもマシン・ライブ独特の“機械を操作している感”が強まるかなぁ、と思いまして、音楽的な均整とトレード・オフで採用しました。

YouTubeの[字幕]をONにしていただくと、都度都度、操作の説明が表示されますので、併せてご参考になさってください!

この緊張感はクセになる

普段の私は、可逆的でノンリニアな編集手法に、すこぶる甘やかされていたのかもしれません。マシン・ライブの、このヒリヒリするスリリングな体験を通じて、大きな衝撃と感動、そしてインスピレーションを得ることができました。

これからも、もっともっとたくさん挑戦してみよう、と思います!

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