いやぁ…… 感慨深い!! そうなんです、Behringerの“Mid-O”クローンこと「RD-8」「RD-9」「TD-3」「TD-3-MO」たちが一堂に会し、ついに“リアル「ReBirth RB-338」の贋作”が眼前に爆誕したのでございます!
「TD-3-MO」とは
Behringer「TD-3-MO」は、説明不要の伝説的ベース・シンセサイザーRoland「TB-303」に、“Devil Fish”と呼ばれるマニア垂涎の改造を施したモデルから強い影響を受けた、モノフォニックのアナログ・シンセサイザーです。
「TD-3-MO」は当初、Devil Fishの考案者であるRobin Whittleさんとの共同開発が予定されていましたが、契約のもつれから両者は関係を解消。それを機に巻き起こった多方面からの批判にBehringerが圧される形で、Devil Fishらしさを色濃く残しつつも、さまざまな改造303のエッセンスを凝縮する方向(言い換えれば、Devil Fish本家との棲み分けが成り立つ方向)へと、大きな仕様変更が行なわれたそうです。
つまり、正確を期すならば、「TD-3-MO」は、「TD-3」のDevil Fish版ではない、ということになります。
「TD-3」との違いや改良点は、自己発振を楽しめるオシレーター・オフ機能の追加、音に深みを与えるサブ・オシレーターの追加、フィルターFM機能の追加、新規の歪みエフェクトの搭載、エンベロープ周りの強化、CV入出力の強化、シーケンサーとは別系統の演奏コントロール機能の強化、MIDIコントロール機能の強化、LEDケース・ライティング機能の追加、などが主だったところ。「TD-3」に「あったらイイな!」と感じていたアレコレがてんこ盛りに追加されていて、完全に別シンセと言って差し支えないほど、出せる音の幅(と、お値段)が格段にアップしています!
カットオフ効き過ぎの謎
「TD-3-MO」のカットオフは、(もちろん周囲の設定にもよりますが)9時25分くらいで早々に閉じ切ってしまい音が出なくなります。確かに、代表的な改造303のいくつかも傾向は似ており、鳴っている音を途切れさせてしまうレベルの極端なチューニングが施されているようですが、その点を踏まえたとしても「TD-3-MO」のそれは、さすがにちょっと効き過ぎてやいないか? と感じられたので、いろいろと探ってみました。
で、原因として最有力だと思われるのが、MIDIによるカットオフ制御が物理ツマミの位置に対し相対的に作用する、という独特の仕様。「TD-3-MO」は、物理ツマミのカットオフとは別に、CC#74によるブライトネス(カットオフ)のコントロールが可能となっており、この二段構えのカットオフを成立させるために、“遊び”の領域を設けた(=物理ツマミ側の可変域をやや狭めに設定した)のかもしれないな、と。
なお、私の「TD-3-MO」は、CC#74に96あたりを一度送ってやると、物理ツマミをゼロ位置にしてもギリギリ音が出るようになりましたが、今度は逆に、カットオフを開き切ったときの音がピーキーになり過ぎちゃうんですよね。メーカー的には、この辺の挙動すべてをひっくるめて“設計どおりの仕様”なのかもしれませんが、もしお困りの方がいらっしゃれば、ご参考になさってください。
“リアル「ReBirth RB-338」の贋作”
さてここらで1曲、お送りいたしましょう。
その昔、“VST規格”がまだヨチヨチ歩きをしていた頃、「TR-808」「TR-909」「TB-303」×2の計4台をエミュレートしてワン・パッケージの作曲ツールに仕立てた、Propellerhead「ReBirth RB-338」という名のソフトウェアが存在したのですが、この度、25年の月日を飛び越え、私はそれを現実世界に錬成することに成功いたしました。ただし、全部贋作です!
当時のRolandは、「ReBirth RB-338」に対してややキレ気味に反応した(ように外側からは見えた)のですが、この絶景には、もはや呆れて噴飯してくださるのではないか、と思います。
とりあえず、で買うのは待った!
「TD-3」のレビューでは、「とりあえず持っていて、損はない!」と締めくくりましたが、この「TD-3-MO」は、“とりあえず”というアヤフヤな気持ちで向き合うことを許してくれない、手強い機材と言えましょう。その一方で、思いのままに御せない難解さや、楽器の側から意外なサウンドを提案してくる挑発的な佇まいに、Moogのイケてるシンセっぽさを匂わせる一面があったりして、総合的にたいへん魅力的なバランスに仕上がっている、とも思いました。
「やあやあ、暴れ馬をこそ乗りこなさん!」と腹をくくれる勇敢な御仁は、ぜひぜひお試しください!